歴史・人物
コピー&ペーストは誰が作った?
コピー&ペーストの歴史ではLarry Teslerの名前がよく挙げられます。ただし、実際の開発は一人だけの仕事ではありません。Xerox PARCの研究環境、Tim MottとのGypsy開発、Smalltalkの編集機能、Appleでの標準化が重なっています。
コピー&ペーストは一人で生まれたわけではない
Larry TeslerとTim Mottは、1970年代にXerox PARCでGypsyというテキスト編集システムを開発し、選択した文章を切り取り、コピーし、別の場所へ貼り付ける操作を実装しました。
ただし、同時期のSmalltalkにも切り取り、コピー、貼り付け、取り消しの編集メニューがあり、現代の操作は複数の研究者と製品による改善の積み重ねです。
紙の編集作業を、画面の中へ持ち込む
印刷物の制作では、文章や写真を刃物で切り、別の台紙に貼り直す作業が行われていました。TeslerはComputer History Museumの口述記録で、ページレイアウト作業をデジタル化し、刃物や糊を不要にしたいと考えていたことを説明しています。
この比喩が『Cut(切り取り)』『Copy(複製)』『Paste(貼り付け)』という、操作結果を想像しやすい言葉につながりました。コンピューター内部の処理を説明するのではなく、利用者が知っている作業に置き換えた点が重要です。
コピー&ペーストが定着するまで
Xerox PARC
Gypsyで直接操作型の編集を実装
TeslerとMottは、選択した文章へ命令を適用する編集方法をGypsyで追求しました。先に対象を選び、その後に切り取りやコピーを行う流れは、現在のGUI操作にも続いています。
Smalltalk
編集メニューを簡潔にする
Teslerの口述記録では、Dan IngallsがSmalltalkの編集メニューにCut、Copy、Paste、Undoを置き、複雑さを減らしたことが語られています。
Apple Lisa
アプリをまたぐ共通命令として整理
Appleへ移ったTeslerらは、Lisaのユーザーインターフェース開発に関わりました。切り取り、コピー、貼り付け、取り消しをアプリ間で共通にする考え方が整えられました。
Macintosh以降
メニューとキー操作が広く知られる
Macintoshの普及により、Commandキーを使った編集操作が多くの利用者に届きました。現在はWindowsのCtrl操作を含め、ほぼすべての主要なデスクトップ環境で使われています。
コピー&ペーストが変えたこと
元の文章を壊さず複製できる
Copyは元の内容を残すため、同じ情報を別の文書や場所で再利用できます。
移動と複製を同じ考え方で扱える
CutとCopyは最初の動作だけが異なり、その後はPasteで配置します。似た操作を一つの体系で理解できます。
文章以外へ拡張できる
画像、セル、ファイル、図形、コードなど、選択できる対象へ同じ考え方を広げられました。
『Larry Teslerが一人で発明した』で終わらせない
Teslerはコピー&ペーストの普及に欠かせない人物です。一方で、Gypsyを共同開発したTim Mott、Smalltalkの編集機能を作ったDan Ingalls、Appleで操作体系を磨いた開発者たちも重要です。
便利な操作は、一つの着想だけで完成するのではなく、実装、利用者テスト、名称、画面設計、アプリ間の共通化を経て社会に定着します。コピー&ペーストの歴史は、その代表例です。
参考資料
歴史的な事実や現在の操作は、以下の公開資料を確認して記述しています。
- Oral History of Larry Tesler, part 1 of 3Computer History MuseumGypsy、Smalltalk、Cut / Copy / Pasteの開発経緯
- Origins of the Apple Human InterfaceComputer History MuseumLarry TeslerとChris Espinosaによる初期Apple UIの記録
- Apple at 50Computer History MuseumTeslerのXerox PARCとAppleでの仕事
- Copy and paste on MacApple Support現在のコピー&ペースト操作
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